橋梁工事は、鉄道や道路などを通すために、障害となる川や渓谷、海などに橋を架け渡す土木工事です。
橋梁とは、「橋」を表す土木用語で、架空構造物という意味です。陸上を通過する場合のみ、高架橋と呼んで区別する場合があります。
橋梁は、架け渡す場所の条件や、目的・用途に応じて様々な形状や構造、耐久性が求められます。そのため、橋梁工事は、高い技術と施工能力を必要とする土木工事なのです。
また、自然の景観にマッチしたデザイン性の高い橋梁は、長い年月にわたり人々を魅了する構造物となっています。
この記事では、橋梁工事について紹介します。
静岡県御殿場市の土建屋に生まれ、大型重機が大好きな子供時代を送る。
建築に憧れ、三重短大で住環境を学ぶ。新卒でハウスメーカーFC工務店の「インテリアプランナー」に応募するも、社長の勘違いで募集したかったのはなんと「エクステリアプランナー」!!
ハウスメーカーで個人住宅のエクステリアを担当。その後、ゼネコン住宅事業部のインテリアプランナー、植木屋の外構プランナーを経て、現在は(株)ガーデンメーカーで営業設計を務める。
目次
橋梁について構造・形状・材料から理解する
橋梁について知ろうとするとき、橋梁の構造・形状・材料から分析すると分かりやすいです。そうすることで橋梁工事も理解しやすくなります。
橋梁の構造
主な構造部材の名称と働きについてまとめました。
上部構造
主桁・横桁 | 上部本体の荷重を支え、その力を橋台や橋脚に伝達する |
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支承 | 上部構造からの荷重を下部構造に伝達する |
伸縮装置 | 温度などの影響による桁の伸縮を吸収する |
落橋防止装置 | 地震などによる上部構造の落下を防止する |
下部構造
橋台 | 橋梁の両端で道路と橋脚を接続し荷重や背面の土砂を支持する |
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橋脚 | 橋梁の中間に設置され上部構造からの荷重を支える |
基礎 | 橋台や橋脚の下で荷重を支え荷重を地盤に伝える |
橋梁の形状
橋梁の主な形状についてまとめました。
桁橋 | 荷重を受ける梁(主桁)を下部構造に載せただけの橋 |
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トラス橋 | 三角形に組み合わせた骨組み(トラス)で桁をつくった橋 |
アーチ橋 | 上向きに弧を描くアーチ形の梁を主な構造とする橋 |
ラーメン橋 | 主桁と橋脚を一体化(剛結)した支承のない構造の橋 |
吊橋 | 塔を建て塔から張り渡した鋼製ケーブルで桁やトラスを支える橋 |
斜張橋 | 塔を建て塔から斜めに張った複数のケーブル(斜材)で吊る橋 |
桁橋は支間長が短い場合に用いられることが多く、吊り橋は支間長が長い場合が多いです。支間とは、上部構造の荷重を下部構造に伝達する重要な部材である支承と支承の間隔のことです。
橋梁の材料
材料別に、橋梁の特徴をまとめました。
鋼橋 | 鋼材は複雑な構造への汎用性が高く施工や補修が迅速で容易 |
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RC橋 | 鉄筋コンクリート(RC)を使用し鉄筋の引張力で強度を向上 |
PC橋 | プレストスコンクリート(PC)を使用しRCよりも高強度 |
石橋 | 木材で支保工を組んで石を両側から積んでいく石造りの橋 |
木橋 | 最も古くから橋の材料とされてきた木材でつくられた橋 |
プレストスコンクリートとは、あらかじめ張力を加えた高強度のPC鋼材を鉄筋の代わりに使ったコンクリートのことです。
現在では、鋼製の材料とPCを組み合わせた橋梁が主流となっています。
橋梁工事の手順は下部と上部で分けられる
現在の道路橋や鉄道橋は、ほとんどが高架部を持ちます。高架部を持つ橋梁の特徴は、荷重を支える下部構造と、橋桁以上の上部構造を合わせ持つ点です。
橋梁工事では、、この2つの工程を理解することが重要になります。
下部工
下部工は、地盤中で橋梁を支える基礎を設置し、橋脚を据え付ける工事です。
基礎は橋梁の土台であり、地震などの自然災害にも耐える堅牢さが必要です。事前に基礎地盤や周辺環境の調査が行われ、現地に合った基礎杭の形状や施工方法が検討されます。
橋梁工事の下部工は、以下のようなフロー(流れ)で施工されます。
基礎杭工 | 橋梁を支えるための杭を地中に打ち込む |
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土留め工 | 掘削時に土が崩れないように矢板(鋼製の板)を打ち込む |
掘削・支保工 | 地面を掘削しながら矢板の支えとなる梁を設置する |
橋脚構築工 | 杭の上に型枠と鉄筋を組立て土台・橋脚になるコンクリートを打設する |
埋め戻し | 掘削した穴を埋め戻す |
上部工
道路橋を例に、上部工について紹介します。
上部工は、据え付けられた橋脚に、橋桁や床版、付属物を設置して道路として完成させるための工事です。
PC橋の橋桁は、プレキャスト(あらかじめ工場で製作すること)部材として現場に搬入されることが多く、場所打ち(現場で橋桁をつくること)は少ないです。
橋桁は工場または現場で、PC鋼材というワイヤーを通して緊張し、圧縮力を加えて強度を上げるプレストレス導入されるのが一般的です。
上部工は、以下のフローで施工されます。
橋桁架設工 | 現場の状況に合ったクレーン車で橋桁を吊り上げて架設する |
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床版工 | 橋桁をつなげた後厚さ25~30㎝のコンクリートの床をつくる |
橋梁付属物工 | 排水・伸縮装置、防護柵・落橋防止などの付属物の設置 |
舗装工 | 道路として車両を通行させるためのアスファルトなどの表層工 |
設備工 | 照明や標識など車両の走行に必要な設備の設置 |
橋梁工事の工法は大きく5つの種類がある
現在の橋梁工事の中心は、鋼製材とPC(プレストレスコンクリート)を組み合わせた鋼橋です。
様々な自然条件や地形に対応する鋼橋の架設工法には、いくつか種類があります。ここでは、その中から代表的な工法を5つ紹介します。
ベント工法
ベントとは、橋梁の架設工事中、橋体などを支える仮支柱のことです。
ベント工法は、桁ブロック付近にベントを設置して支えながら、自走式クレーンやケーブルクレーンなどで桁を吊り上げ架設する工法です。
最小限の仮設備で架設できる、所要工期が短い、各種構造形式の橋梁に適用できるなどのメリットがあります。
送出し工法
送出し工法は、直下に流水や道路、鉄道などがあってクレーンを設置できないときに使用する工法です。
ウインチやジャッキなどの駆動装置と台車を組み合わせた手延機を使って、橋軸方向に桁を先送りした後、桁を降下・横移動させて設置します。
架設現場の隣接地に主桁と手延機を組み立てる場所、送り出した先で手延機を解体する場所の2つが必要になります。
比較的、仮設備が多くなり、工期も長くなる工法です。
片持ち式架設工法
片持ち式架設工法とは、河川上や山間部などで、ベントやトラッククレーンを設置できない場合に施工される工法の一つです。
トラベラークレーンは、走行設備上で組み立てられ、桁を順次架設していきます。部材運搬台車や荷取り設備が必要です。
片持ち式架設工法には、トラベラークレーンの他、ケーブルクレーンやフローティングクレーによるものがあります。
ケーブル式工法
ケーブル式工法は、鉄塔、走行索、アンカーなどで構成された、ケーブルクレーン設備で部材を運搬、据え付ける工法です。
鉄塔から、施工中の橋体を支えるための吊り索のかけ方の違いで、直吊りと斜吊りの2種類あります。
直吊り設備は鉄塔・主索・吊索・アンカーなどで構成され、斜吊り設備は鉄塔・斜吊り索・アンカーなどで構成されます。
一括架設工法
一括架設工法は、大型搬送車や大型クレーンで、一括して架設する工法です。
大型自走クレーンによる一括架設は、工場または現場付近で地組された大ブロックを、一括して吊り上げ架設します。
大型搬送車による一括架設は、架設位置近くで地組した大ブロック下に大型搬送車を入れ込み、架設位置まで運搬する工法です。
大型搬送車は、様々な性能を持った台車と組み合わせることで、各種現場に対応させることができます。
橋梁工事 まとめ
橋梁は、河川や山間部だけでなく、都市部の様々な障害の上に設置され通行路となります。そのため、橋梁工事には、高い技術力や安全性が求められるのです。
また、供用が開始された後も、人的交通や物流の利便性と安全を確保するための維持補修が欠かせません。
高い専門性を持った土木技術者を目指す人にとって、橋梁工事は、やりがいのある土木工事といえます。