「明るい未来」の花言葉をもつサラサドウダンは、初夏に咲く鈴のような赤と白の花・つやのある実・秋の紅葉が美しく庭木に人気の木。
サラサドウダンの剪定の時期や方法、育て方、植え方、おすすめの種類、ドウダンツツジとの違いなどたっぷりと紹介します!
基本データ
- 分類
- 庭木-常緑
- 学名
- Enkianthus campanulatus/Furin-tsutsuji、Redvein enkianthus
- 科・属名
- ツツジ科・ドウダンツツジ属
- 別名
- フウリンツツジ
- 草丈・樹高
- 1.5〜5m
- 栽培可能地域
- 中国・四国以北
- 花色
- 赤、白、複色(赤・ピンク・白)
- 開花期
- 5〜7月上旬
- 結実期
- 7月下旬〜11月
- 耐暑性 / 耐寒性
- 弱い/強い
サラサドウダンの花・実・葉の特徴と花言葉
北海道から四国までの山の奥深くの岩場に自生するサラサドウダンは、日本固有のツツジの仲間。
春に新緑を芽吹き、夏に鈴のような花が咲いて実が付いた後、秋に紅葉し、冬に葉を一斉に落とす落葉性の低木です。
花や紅葉の観賞が楽しめ季節感のある庭を演出できるだけでなく、生長スピードがゆっくなため、剪定(せんてい)などの管理の手間がかからず、庭木としておすすめです。
サラサドウダンの花と花言葉
5〜7月ごろにかけて、サラサドウダンは枝先に伸びだ葉の付け根から、直径2〜3cmほどの鈴のような形をした花が咲きます。
赤やピンクと白の複色の模様が入る花びらは、インドが起源の「更紗染め」といわれる染織工芸に似たドウダンツツジということから「サラサドウダン」の名前が付いたようです。
・サラサドウダンの花言葉
サラサドウダンの花言葉は「明るい未来」「節制」「控えめな愛」「控えめな幸せ」です。
サラサドウダンの葉と実の特徴
・サラサドウダンの実
花が咲き終わると、7月下旬ごろからつやのある緑色の実を付けるサラサドウダン。
花は地面に向かって垂れるように咲きますが、実は空に向かってS字を描くように付くため、ユニークな姿が楽しめます。
熟すと次第に赤くなり、タネがこぼれる秋頃になると乾燥して茶色く変色します。
・サラサドウダンの葉
細く伸びた一本の枝の先端から、外側に向かって楕円形(だえんけい)の葉が四方に展開するサラサドウダン。
丸みのある葉の縁(ふち)はノコギリのようにギザギザしており、表裏に無数の産毛が生えています。
秋になると橙(だいだい)や黄色に紅葉します。
サラサドウダンの生長スピード・樹高・苗木の価格
生長スピードがゆっくりなサラサドウダンは、自生地では大きくなると樹高が3〜5mほどになる木ですが、庭の敷地であれば1.5〜2mほどの低木になります。
定期的な剪定をすれば、背が高くなり過ぎたりせず、狭いスペースでも育てられます。
苗木の価格は、大きさや品種によって違いますが、樹高50〜60cmほどで、1,400円程度から販売しているところが多いようです。
増やし方|サラサドウダンの挿し木の方法
サラサドウダンを増やしたいときは、枝の一部を切り取って「挿し木」をつくりましょう!
・サラサドウダンの挿し木に最適な時期
サラサドウダンの挿し木づくりは、花が咲き終わった6〜7月ごろがベスト。
8月以降では暑さで木が弱ってしまい、発根しにくくなてしまいます。
・サラサドウダンの挿し木の手順
Step1. サラサドウダンの新しい枝を、先端から数えて4〜6節目でカット。このとき、先端のやわらかい部分もカットします(5〜15cmほどの長さ)。これを「挿し穂」といいます。
Step2. 挿し穂の上部に付いた葉を1/3程度(2〜4枚)ほど残し、下部の葉や枝は全て取り除きます。
Step3. 小さめのコップや花瓶に入れた水に、2時間ほど挿しておきましょう。その後、水はけの良い土が入ったビニールポットなどに挿して、涼しい日陰で管理しましょう。2〜3カ月で根が出ます。
サラサドウダンの種類|ドウダンツツジやウラジロヨウラクとの違い
ツツジ科に属するサラサドウダンは、スズランのような白い花が咲くドウダンツツジの仲間です。
赤・ピンク・白・複色の花だけでなく、赤や白一色に咲くものや、赤く紅葉するものなど、さまざまな品種があるようです。
ここでは、サラサドウダンの品種と、花の見た目がよく似たドウダンツツジやウラジロヨウラクとの違いについて解説します。
サラサドウダンの種類
・ベニサラサドウダン
花がイチゴの実のような赤さになるベニサラサドウダン。
観賞価値が高く園芸品種のような美しさがありますが、サラサドウダンの変種とされ、日本の野山にも自生しているようです。
・シロバナフウリンツツジ
ドウダンツツジのように、真っ白な釣鐘状の花を咲かせるシロバナフウリンツツジ。
サラサドウダンと同じように、花の先端が反り返らず口を大きく開くように咲くため、すぐに見分けがつきます。
・カイナンサラサドウダン
カイナンサラサドウダンは、ベニサラサドウダンの花よりも薄い赤色で、白または黄緑色の線が入ります。
また、ブドウの房が垂れが下がるように咲く姿が特徴的で、美しい花がより目立ち、観賞価値があります。
サラサドウダン・ドウダンツツジ・ウラジロヨウラクとの違い
・サラサドウダン
真っ白な釣鐘状の花が咲くドウダンツツジとは違い、赤・ピンク・白の模様が入るサラサドウダンは、丸みのある大きな葉も特徴的。
しかし、暑さの耐性がドウダンツツジよりも低く、団地では育ちにくい性質があります。
・ドウダンツツジ
サラサドウダンよりも細く、先がとがった小さな葉が、秋に真っ赤に紅葉するドウダンツツジ。
葉が細かく密集し刈り込みにも強いため、目隠し用の庭木や生垣に使われることが多いです。
釣鐘状の白い花は先が細くしぼみ、つぼのような姿にも見えます。
・ウラジロヨウラク
サラサドウダンやドウダンツツジのように、釣鐘状の赤い花を咲かせるウラジロヨウラク。
ツツジ科ヨウラクツツジ属に分類され、学術的には異なるツツジの仲間です。
花はドウダンツツジのように先が細くしぼみますが、外側に大きく反り返るように咲きます。
サラサドウダンの育て方・管理方法
植え付け・植え替え
●有機質がたっぷりと入った水はけの良い土に
初夏に花をたくさん咲かせるサラサドウダンは、有機質がたっぷりと入ったふかふかの土でよく育ちます。
また、ゴツゴツとした岩場などに自生しているため、水はけの良い土で育てましょう。
水はけが悪くて硬い土では、根腐れが起こりやすく、枯れてしまうことも。
植え付ける前には、掘り起こした土に腐葉土、赤玉土、ピートモスを混ぜて、排水性・通気性・保水性を良くしておくといいです。
●サラサドウダンの適切な植え付け・植え替え時期
寒さに強いサラサドウダンは、開花前の肌寒い2月下旬〜4月ごろか、生長が緩やかになる9月下旬〜10月下旬ごろに植え付けや植え替えをします。
ただし、氷点下を下回るような極寒日や、気温が30℃を超えるような猛暑日に植え付けをしてしまうと、株が枯れてしまうこともあるので、できるだけ気温が穏やかな日を選びましょう。
鉢植えの場合は、2〜3年に1回程度のペースで植え替えをします。
根詰まりを起こしやすく、根鉢がパンパンになってしまうと枯れてしまうこともあります。
●直径3〜5mほどのスペースを確保してから
大きくなっても樹高が2m程度の低木になるサラサドウダンですが、植え付けるときは直径3〜5m程度と広めのスペースを確保しましょう。
スペースが十分でないと、サラサドウダンの枝葉が周辺の草花に覆いかぶさってしまったり、周りの建造物を傷つけたりする可能性も出るので、苗木が小さくても、植え付ける場所はある程度の広さを確保してくださいね!
●サラサドウダンの苗木の植え方
サラサドウダンをはじめとするツツジ科の植物は、根の張りがほかの庭木よりも弱いため、植え付けるときは、麻布を取り除いてから穴に植え付けます。
植え穴の深さは根鉢の高さよりも3cmほど低くし、根鉢の周りに片足が入るぐらいの広さをつくりましょう。
根鉢の表面が少し地面から出るように植え付け、足で踏み固めながら用土を入れます。
苗木のうちは幹がやわらかく強風によって折れやすいので、苗木の横には支柱を立て、木が折れたり倒れたりしないようにするといいです。
肥料
生命力の強いサラサドウダンは、1回の肥料の量を一握りよりも少なく与えるといいです。
肥料を多く与えてしまうと秋に紅葉しない場合も。
新葉が芽吹く準備期間となる2月に寒肥を、実が熟しはじめる9月に追肥を与えましょう。
花付きが良くなるように、リン酸(P)が多めに入った緩行性化成肥料か、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスが取れた緩効性化成肥料、または油かすを与えるといいです。
剪定
サラサドウダンは、生長速度が遅いため、放置しなければ、背丈が高くなり過ぎたり、枝葉が混み合ったりすることもあまりありません。
剪定は2年に1回のペースで行いましょう。
枯れた枝や不要な枝を切り落とす程度で剪定すると、自然樹形に仕立てられ、たたずまいがより美しくなります!
●サラサドウダンの適切な剪定時期|7月上旬〜7月下旬
サラサドウダンの剪定は、花が咲き終わる7月上旬〜7月下旬ごろにしましょう。
8月を過ぎてしまうと、枝の切り口から水分が抜けてしまい、枝枯れしてしまう場合もあります。
●サラサドウダンの剪定の手順
自然に樹形が整いやすいサラサドウダンは、太い枝を間引き過ぎたり、枝をたくさん切り詰めたりする必要があまりありません。
枝葉が混み合った箇所や、長く伸び過ぎた枝葉、地面から伸びる不要な枝を切り落とす程度で大丈夫です。
背が高くなり過ぎて、小さくしたい場合は、中心の幹を切って高さを調整する「芯止め」をしましょう。
Step1. 株元近くの不要な枝を切り落とす
地面から伸びる枝(ひこばえ)や、幹の根元付近から生える胴吹き枝を、付け根部分で全て切り落としましょう。
そのまま残しておくと、花や実の付きが悪くなってしまいます。
Step2. 株の上部の枝葉の数を間引く
中心の太い幹からは太い枝が複数に伸び、枝先に細い枝葉が密集しています。
株の外側へ強く出た枝葉を、先端から株の内側に向かって2〜5節目の枝分かれした箇所まで切り戻しましょう。
全ての枝葉を切ってしまうと花が咲かなくなってしまうので、樹形が乱れている箇所、枝葉が混み合っている箇所を剪定するぐらいで問題ありません。
Step3. 幹の先端から出る枝葉の数を間引く
幹の先端に展開する枝葉は、生長の流れから鬱蒼(うっそう)としやすいです。
幹の最先端となる太く伸びる枝葉を1〜2節ほど切り詰めて、枝葉の数を少なくしましょう。
すっきりとした見た目になり、樹形の美しい庭木になりますよ!
病害虫
●病気
・もち病
・サビ病
比較的春と秋になると、サラサドウダンをはじめとするツツジ科の植物は、「もち病」と呼ばれる病気を発症させることがあります。
葉・葉柄(ようへい)・蕾(つぼみ)・花に菌が付着すると、焼いたもちのように赤く膨れ上がり、そのまま枯れてしまうことも。
また、日当たりや肥料の与え過ぎ、過湿によってサビ病などの病気も発生することがあります。
病気は日当たりが悪くて湿気が溜まるような場所で発生しやすいので、被害にあわないようにジメジメとした場所を避けて植え付けたり、剪定をしたら切り口を治癒する癒合剤を塗りましょう。
剪定ばさみ、ノコギリなどはしっかりと殺菌消毒をしてから使ってくださいね!
●害虫
・ハダニ
・カイガラムシ
・カミキリムシの幼虫
日当たりや風通しが悪いと、アブラムシやカイガラムシなどの害虫が付くともあります。
また、まれにカミキリムシの幼虫が幹を食害し、株を枯らす場合もあるので、見つけ次第補殺しましょう。
日当たり
サラサドウダンは、午前中に陽の光が当たり、午後には半日陰になるような涼しい場所ですくすくと育ちます。
日当たりが悪い場所だと、初夏に花が咲かなかったり、秋に紅葉しなかったりする場合も。
できるだけ、春から秋の間にしっかりと陽が当たるような、暖かい場所に植え付けましょう。
また、冬の強い北風は乾燥と寒さによって、株が弱ることもあるので、建物の影になるような場所を選ぶといいです。
水やり
サラサドウダンは、基本的には自然に降る雨だけの水分で大丈夫です。
ただし、植え付け直後、苗木が地面にしっかりと根付くまでの1年間、猛暑日が続くような日には、土が乾燥しないように定期的に水やりをしましょう。
愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期から植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。公園の整備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植栽工事に現場代理人として携わる。
リゾートガーデンスタイル専属の庭師×Webコンテンツクリエイター。 カナダのトロントで造園士を、その後日本で花屋のバイヤー・鉢物の管理・アドバイザーを経験した後、ヤシの木を主体とするリゾート・ドライガーデンの造園士に。 現在は、リゾートガーデンスタイルの社会福祉施設・DOG CAFEの専属庭師に加え、畑の開拓・管理、SNSも兼務。 植物を専門とするWebコンテンツクリエイター、ガーデニング商品の監修者としても活躍中。