自分の将来を見据えるとき、働いている業界の全体像を把握しておくことは非常に重要です。

・この仕事が好きだから働き続けたいが、業界に将来性はあるのか
・今の自分に与えられている条件は業界の平均なのか、低いのか高いのか
・給与や福利厚生のさらなる向上のためには業界の外にでるべきか

このような不安や疑問を解消するには、業界全体の動向をチェックする必要があります。

この記事では、まず、造園業界の規模を同じ総合工事業の土木業界と比較して、将来性について展望しています。

次に、造園会社の規模別にどんな違いがあるのかも紹介していますので、転職先の「会社選び」の参考にしてください。

造園会社の種類のまとめ(仕事内容、公共・民間、元請・下請)についてはこちらをクリック

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期か ら植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。 公園の設備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植 栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 お庭の窓口(転職情報)編集部

お庭の窓口転職情報の編集部です。 社内の造園・外構のプロたちから助言をいただきつつ、皆様に有益な情報を提供できるように頑張ります。

目次

造園業界の規模ってどのくらい?

札幌の噴水の写真

造園・園芸・外構という3つの業界は、お互いを補い合う関係といえるほどの深いつながりがあります。そして、この3つの業界を合わせると、市場規模は1兆円にもなるのです。

それでは、造園業界だけの規模は、他の業界と比較してどのくらいのものなのでしょうか。

国土交通省は、令和元年度実績として、建設工事施工統計調査報告を公表しています。工事のみの集計ですが、大まかな比較には役立つはずです。

この調査報告を基に、造園業界と土木業界と比較しました。造園と土木は、日常的に建設機械を使う土工に縁が深い業種であり、他の業種に比べると業種間の人の移動も多く見受けられる関係です。

業種別就業者数 

木を囲うような足場

国交省の建設工事施工統計調査報告の第8表に「業種別-就業者数」が掲載されています。

業種別就業者数

令和元年度の建設業就業者数が、業種別に分かります。社会インフラや災害復旧、トンネル工事や高規格道路などの工事に関わることが多い土木は、当然、就業者数が多くなります。

造園も土木も臨時や日雇いという雇用形態が減少し、社会保険や厚生年金などの福利厚生のある雇用が着実に増加しています。

ここで注目していただきたいのが、造園の就業者数の増加率が土木に比べると大幅に高いということです。他の業種と比較しても高い増加率といえます。

発注者別元請完成工事高

整然と並ぶ木の写真

国交省の同上の資料の第4表に「発注者別、業種別-元請完成工事高」が掲載されています。

発注者別、業種別の元請完成工事高

上記表は、平成30年度と元年度のみの比較ですが、ここでも造園の伸び率は、土木よりも大幅に高くなっています。上記の表にはない、業務として発注されているものをプラスすれば、造園会社の伸びはさらに高くなると考えられます。

また、土木は公共の元請完成工事高の比率が高いの比べて、造園は民間・公共で大きな差はありません。バランスよく工事を請け負っていることが分ります。

引用元 国土交通省 建設工事施工統計調査報告(令和元年度実績) 調査結果表

建設業の動向と造園業界の将来性

広場に人のいる写真

以下の表は、建設業における、元請完成工事高に占める維持修繕工事の割合の推移です。

元請完成工事高に占める維持修繕工事の割合

引用元 国土交通省 将来の建設市場に対応した建設企業のあり方

維持修繕工事の割合は、民間では完工高の増減に関係なく増加基調、公共では新設工事の急減にもかかわらず大幅に増加しています。この傾向は何を意味するのでしょうか。

第一の理由としては、社会基盤の整備が進んで、飽和状態になっているということです。

次に、過去に整備された社会基盤が経年劣化で更新の時期を迎えていることや、安易に新設せずに再利用を考えるという現在の社会的風潮があると考えられます。

このような建設市場の動向は、造園業界にとって有利に働いています。その証拠が、前述の造園業界の就業者数や完成工事高の伸び率です。

造園会社が携わる植物は生きて生長するものであり、施設や設備の経年劣化よりもはるかにランニングコストを必要とするものです。

また、ヒートアイランド現象や環境が人に与える影響に対する関心の高まりは、「緑」の重要性をますます大きなものとしています。

社会基盤の整備が落ち着き、さらなる生活の豊かさや快適さを「緑」に求めるという側面もあります。

造園業界は、これからも堅実な成長を続ける将来性のある業界なのです。

造園会社の内容を規模別に紹介!

ミニチュア風写真

ここでは、造園会社の内容を、会社の規模別に見ていきます。業界最大手、地方の老舗会社、
中小規模の会社の3つを例として紹介します。

業界最大手の給与・福利厚生

家と白いカーポート

造園業界の最大手の会社といえば、「住友林業緑化」です。一般住宅から都市の緑化、農産事業まで、まさに緑のトータルプランナーといえる企業です。

会社の規模売上高276億円・従業員706名
平均年収598万円(施工管理)
休日・休暇完全週休2日制(休む曜日は職種により異なる)年間休日123日、祝日・年末年始・リフレッシュ休暇・ボランティア休暇
福利厚生など退職金制度・確定拠出年金制度・企業年金基金制度・財形貯蓄制度、クラブ活動(各種スポーツ、造園勉強会ほか)厚生施設(リロクラブ・リゾートトラスト利用)

職種が多いため、生かせる技術や知識も多いのが特徴といえます。特に基幹事業である住宅緑化事業は、造園・農学からデザイン・美術まで幅広く自分の得意を生かせる職種です。

地方老舗造園会社の給与・福利厚生

建物の裏

ここでは、老舗造園会社として、岐阜県の「岐阜造園」について紹介します。岐阜造園は1927年創業で、現在は、造園緑化事業・住宅エクステリア事業・不動産の販売の3本柱で事業運営されています。

2016年11月、造園専業としては全国初の上場企業(名証二部)となっています。

会社の規模売上高27億7,000万円・従業員96名
平均年収491万円
休日・休暇年間休日108日・年次有給休暇(10~20日)、年末年始・GW・夏季休暇・産休育児休暇・介護休暇
福利厚生など資格取得支援制度・時短勤務制度・社宅家賃補助制度

岐阜県だけでなく、愛知県、大阪府、東京都などにも出先機関があり、積極的に事業拡大を目指している企業です。

中小規模の造園会社の給与・福利厚生

壁面緑化

中小規模の造園会社として、北海道札幌市に拠点を置く「四宮造園」を紹介します。四宮造園は1971年創業の創業で、札幌市で造園A、土木A2に格付けされている会社です。

年末年始・お盆休み・慶弔休暇

会社の規模売上高11億円・従業員29名
平均年収500万円程度(造園)400万円程度(一般事務)
休日・休暇年間休日106日
福利厚生など退職金共済・資格支援制度・教育研修制度

給与体系に評価制度を導入していて、実力主義を打ち出しています。

まとめ

升目に緑

就業者数や完成工事高を他の工事業と比較することで、造園工事業のおよその規模感はつかめたはずです。

造園工事業は、土木工事業に比べると規模は小さいですが、就業者数や元請完成工事高は伸ばしています。高い専門性や技能性を柱に、社会にとってなくてはならない業界として、将来性は十分です。

また、造園会社の内容について、規模別に3つの例を紹介しました。規模が大きい会社ほど、給与や福利厚生は優遇されています。

ただ、給与や福利厚生が優遇されるほど、求められるものは大きくなり責任も重くなる可能性があることを忘れてはならないでしょう。

お庭業界での
転職なら

造園、園芸、外構、土木業界での転職を今すぐ探すなら業界専門の求職サイトがオススメ!