「一人親方の確定申告のやり方を知りたい」
「白色申告・青色申告ってなに?」
「インボイス制度ってなんだろう?」

一人親方として仕事をしている場合は、確定申告を行わなければなりません。しかし、「確定申告について知識が無い」「確定申告のやり方が分からない」という方もいると思います。

そこで今回は、一人親方の確定申告の方法や白色申告・青色申告のメリット・デメリットを解説していきます。
記事後半では、2023年から導入されるインボイス制度や労災保険について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期か ら植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。 公園の設備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植 栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 ダーチー

工場に勤務しながらWebライターをしているダーチーと申します。これまで、建設業や製造業、物流業、飲食店のアルバイトまで経験しました。

目次

確定申告とは?なぜ必要?

パソコンの前で悩む男性

確定申告とは、1年間の所得税を精算するための手続きです。1月1日〜12月31日までの所得を自分で計算し、税務署に報告しなければなりません。

会社員の場合は会社が税金の処理(年末調整)を行ってくれるので、確定申告は必要ありません。しかし、一人親方や個人事業主、フリーランス、副業をしている方は確定申告が必要になります。

なぜかと言うと、「個人・事業で得た収入がある場合は、税務署に正しい所得を報告しなければならない」という決まりがあるからです。

一人親方に必要な確定申告方法とは?

会社員であれば年末調整があるので、確定申告は必要ありません。一人親方の場合は個人事業になるので、確定申告する必要があります。

一人親方が確定申告しないと、無申告加算税が発生する、延滞金が発生する、ローンが組めなくなるなどのデメリットがありますので、必ず行わなければならない手続きです。

申告書には「確定申告書A」「確定申告書B」があります。一人親方の場合、「確定申告書B」に記入して提出します。

白色申告と青色申告

確定申告には、「白色申告」「青色申告」があります。一人親方が確定申告をする場合、この2つのどちらかで確定申告することになります。

「白色申告」「青色申告」、それぞれの特徴を以下にまとめました。

【白色申告】

  • 簡易簿記というシンプルな記帳で申告するため経理が簡単
  • 記入する項目が少ない
  • 特別控除が無い

【青色申告】

  • 複式簿記という記帳方法で申告すると、1年の所得から控除を受けられる(55万円〜65万円)
  • 簡易簿記の場合は、控除額が10万円までになる
  • 赤字があった場合、損益を3年間繰り越せる
  • 家族の給与を経費にできる

このような特徴があります。

白色申告は簡易簿記でOKなので、提出する書類も少なく簡単に確定申告ができます。しかし、特別控除が無いため、所得控除や税金の軽減ができないというデメリットがあります。

複式簿記はやや難しい記帳方法ではありますが、所得控除が受けられます。簡易簿記でも10万円の所得控除を受けられます。

また、家族の給与を経費にできますし、3年間まで赤字を繰り越せるので、青色申告のほうがメリットが大きいと言えます。

また青色申告は事前に、「開業・廃業等届出書」を税務署に提出しなければなりません。

「白色申告」「青色申告」、どちらで確定申告するかは個人の判断です。しかし、きちんと事業を行っているなら、メリットの大きい「青色申告」が良いでしょう。

一人親方の確定申告方法

一人親方の確定申告の方法はどうすれば良いのでしょうか。

必要書類、所得金額や税額などの計算の仕方、経費、注意点まで詳しくお伝えしていきます。

必要書類、申告方法、所得金額・課税所得金額・税額について

確定申告に必要な書類は以下のとおりです。

【白色申告】

  • 確定申告書B
  • 収支内訳書
  • 生命保険料控除などの書類

【青色申告の申請を出している場合】

  • 確定申告書B
  • 青色申告決算書
  • 損益計算書
  • 貸借対照表
  • 生命保険料控除などの書類

源泉徴収されているなら「支払調書」も必要になります。その場合は、取引先に「支払調書」の発行をお願いしましょう。

所得金額、課税所得金額、所得金額と課税所得に対する税額の計算方法は以下のとおりです。

【所得金額の計算】
所得金額とは、収入から経費を引いた額のことです。

計算式は、収入金額−必要経費=所得金額

となります。

【課税所得金額の計算】
所得金額から、所得控除を引いた額のことです。所得控除には、基礎控除、社会保険料、配偶者控除、医療費控除、生命保険控除などがあります。

計算式は、所得金額-所得控除=課税所得金額

となります。

【所得金額、課税所得に対する税額の計算】
納税する税金のことです。

計算式は、課税所得金額×所得税の税率-税額控除=税額

となります。

所得税の税率は人によって様々で、7段階に分類されます。「国税庁 No.2260 所得税の税率」で確認しましょう。

確定申告書に記入ができたら、税務署に提出します。自分で計算するのが難しい場合は国税庁の確定申告等作成コーナーや、会計ソフトを使うと効率よく作成できます。

申告は、最寄りの税務署か申告会場に出向く方法と、「e-Tax 国税電子申告・納税システム」を利用しインターネットで申告する方法があります。

事業が忙しく暇がない場合は、税理士に依頼するのも良いでしょう。

所得税の税率

経費としての計上とは?

一人親方の場合、材料費や交通費などを経費として計上することができます。利益を多く出すためには絶対にやっておきたいところです。しかし、経費として認められないものもありますので注意が必要です。

主に経費として計上できるのは以下になります。

  • 材料費
  • 交通費
  • 運搬費
  • 車両費
  • 接待交際費
  • 家賃
  • 光熱費
  • 通信費
  • 損害保険料

など…

仕事に使うためにかかった費用ならほとんど経費にできます。家賃や通信費、光熱費などが日常生活で使った分も含まれる場合、全てを経費にすることはできません。その場合「家事按分」というやり方で、家事と事業で使った分を分けて計算することになります。

家賃は使用した時間や広さ、部屋数で計算します。しかし、基準に関しては明確な決まりはありません。

また、家賃を経費とする場合、白色申告だと「事業で使用した割合が50%以上」でなければなりません。青色申告は割合に関係なく、使用した分を経費にできます。

必要経費にできる金額など詳しい詳細は「国税庁 No.2210やさしい必要経費の知識」をご覧ください。

申告時の注意点

【申告期限】
まず注意したいのが、申告期限です。前年の1月1日から12月31日までの税額を確定申告する場合、2月16日〜3月15日が申告期限となっています。(消費税は翌年3月31日まで)

提出期限に遅れて提出すると、無申告加算税(5〜20%の加算)や重加算税(40%の加算)がかかることがあります。

また、申告内容が間違っていたり申告漏れがあった場合は、再度書類を作り直し期限内に提出しなければなりませんので、こちらも注意してください。

正確に申告するためには、毎月帳簿に記入して資産状況を把握すること、棚卸し作業を行い売上純利益を把握することが大切です。

【経費の計上の注意点】

もし、年末の時点で作業が終わらず材料が余っていた場合、売上が確定していないので、その年の経費にすることはできません。仕掛品(製造途中で未完成の製品)として計上することになります。

売上純利益の計算式は以下で求められます。

売上純利益=売上総額−(総仕入額−棚卸資産)

※仕掛品には、外注費や人件費も含まれます。

また、一人親方の組合費は経費として計上可能です。しかし、国民健康保険料、労災保険料は経費にはなりません。確定申告書に記入する際は、社会保険料控除になるので覚えておいてください。

【給与と外注費の違い】
一人親方が誰かに仕事を手伝ってもらった場合、給与か外注費かで税金が変わります。

2つの特徴は以下のようになります。

雇用契約:給与
長期の雇用契約は、源泉徴収あり、社会保険加入の義務あり

請負契約:外注費
一時的な請負契約は、源泉徴収は無し、社会保険加入義務なし

このようになるので、請負契約の方が税金が安くなります。しかし、税務署の判断で、外注費が給与になることもあります。

インボイス制度と一人親方について

書類を見ながら議論を交わすビジネスマンの手

2019年10月に日本では複数税率が導入され、軽減税率8%と標準税率10%にわかれました。これにより「区分記載請求書等保存方式」が開始されました。

そして、2023年10月1日からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されます。

さて、このインボイス制度とはどんなものなのでしょうか。一人親方とどんな関わりがあるのでしょうか。

順番に説明していきます。

インボイス制度って何?

インボイス制度とは、売り手が買い手に正確な適用税率や消費税額等を伝えて、正確に経理ができるようにするための制度です。インボイス制度が導入されると、売り手は買い手に「インボイス(適格請求書)を発行しなければなりません。

この「インボイス(適格請求書)」とは、元からある「区分記載請求書」に登録番号、適用税率、消費税額等が追加されたものです。

つまりインボイスとは、「区分記載請求書」に変わる、「消費税額に関しての適格な請求書」ということです。

ただしインボイスを発行できるのは、あくまで課税事業者であり、さらに登録申請書を税務署に提出した「適格請求書発行事業者」だけです。免税事業者は、インボイスを発行できません。

一人親方との関わり

「インボイス制度は一人親方に関係あるの?」

と思うかもしれませんが、結論から言うと「とても関係があります。」

なぜかと言うと、インボイスを発行できない一人親方(免税事業者)からは、仕入税額控除ができなくなるからです。

例えば、工事業者がゼネコンから100万円で仕事をもらい、さらに工事業者は「免税事業者の一人親方」に40万円で仕事を依頼しているとします。

この場合、100万円の仕入額にかかる消費税は10万円、一人親方に40万円で依頼した仕事の消費税は4万円です。

これまでだと、工事業者が支払う消費税は仕入額控除により、「10万円−4万円=6万円」になります。

インボイス制度が導入されるとこの場合、一人親方が免税事業者なのでインボイスの発行はできません。すると工事業者は仕入額控除ができなくなり、10万円の消費税を負担することになるのです。

そうすると工事業者は、免税事業者の一人親方との取引をやめて、別の課税事業者の一人親方に仕事を依頼する可能性が出てきます。

年間売上1000万円がボーダーライン??

一人親方が今までどおり取引するには、課税事業者である必要があります。

課税事業者になるには以下の条件を満たし、登録申請書を税務署に提出しなければなりません。

  • その年の前々年の課税売上高が1,000万円を超えている
  • または、特定期間(その年の前年の1月1日から6月30日まで)の課税売上高が1000万円を超えている

(例)

  • 1年目課税売上1100万円:免税事業者
  • 2年目課税売上1050万円:免税事業者
  • 3年目課税売上900万円 :課税事業者

上記に当てはまる一人親方であれば、インボイスの発行ができるので何も問題はありません。

「じゃあ年間課税売上1000万円以下の免税事業者は、課税事業者になれないからインボイスの発行を受けられないの?」という疑問が出てきますよね。

今後は免税事業者の方でも、「登録申請書(適格請求書発行事業者)」と「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出すれば課税事業者になることができます。

適格請求書発行事業者の登録期限は、2023年3月31日までです。(インボイス制度が始まるのは2023年10月1日)

また、期限内に申請した方は「消費税課税事業者選択届出書」は提出不要です。

期間を過ぎてから申請すると、インボイスを発行できるのは翌年からになるので注意してください。

インボイス制度に関する注意点

インボイス制度が導入されると、経理の仕事が増えたり、課税売上が減少することが考えられます。

そのため、きちんとインボイス制度の仕組み、書類の書き方を理解することや、課税事業者になるかどうかを検討しておく必要があります。

最低でも下記のことは注意しておいて下さい。

  • インボイスの仕組み
  • インボイスの開始時期
  • 登録に必要な提出書類
  • 自分は課税事業者なのか、または課税事業者になる必要はあるのか

インボイス制度は収入に大きく関わることなので、一人親方は今のうちに対策できるようにしておきましょう。

一人親方の労災保険について

隣に座る男性と議論を交わす写真

個人事業主や一人親方は、労災保険に加入できません。しかし「労災保険特別加入制度」を利用すれば労災保険に加入することができます。

加入の仕方は、厚生労働大臣が認めた団体である「労働保険事務組合」に入会することです。入会には労災保険料と組合費が必要になります。

各都道府県にある団体によって組合費は変わりますが、労災保険料は変わりません。

労災保険に入っていない一人親方は、作業中や通勤で事故にあってケガをしても全額治療費を払わなければなりません。ですので、万が一のときに備えて「労災保険特別加入制度」に加入すると良いでしょう。

年末調整との違いって?

大きな疑問を持つ女性

年末調整と確定申告は、どちらも年間に支払った所得税額を正しく確定する手続きのことです。1年間で支払った所得税等を生命保険などの控除を含めて計算し、正しい所得税額を出します。

所得税を払いすぎていた場合、還付金として戻ってきます。足りない場合は不足分を支払います。

年末調整と確定申告の大きな違いは、「対象者と時期」です。

年末調整は、会社員が対象で、勤務先が年末に手続きを行います。
確定申告は、個人事業主やフリーランス、一人親方など、個人で収入を得ている方が対象で、3月に自分でで税務署に申告します。

一人親方の確定申告と今後のインボイス制度

データが載った書類と虫眼鏡とペン

今回は一人親方の確定申告、2023年に始まるインボイス制度、について解説してきました。どちらも一人親方にとって重要なことです。

忙しい一人親方にとって、確定申告を自分で行うことは少し面倒に感じるかもしれません。しかし確定申告を行わないと税務署の調査が入り、延滞金や、これまでに収めなかった所得税や住民税を支払わなければなりません。

期限内に申告すること、申告漏れがないようにすること、資産管理をきちんと行うことが大切です。

インボイス制度については、前述したとおり制度の仕組みや、必要書類を今のうちに把握しておくことが大切です。

  • 免税事業者はインボイスの発行ができない
  • インボイスを発行するには課税事業者になる必要がある
  • 適格請求書発行事業者の登録期限は、2023年3月31日まで
  • インボイス制度が始まるのは、2023年10月1日から

制度が始まってから焦らないように、今から準備しておきましょう。

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