土地造成工事とは、「活用する目的に合わせて土地を改良すること」です。

荒地や傾斜地、既存の建築物を解体撤去して更地にした土地などを、宅地や商業施設、駐車場などをつくることができる土地に整備する工事ということなります。

土地造成工事は、建設業でいうと、土木一式工事に該当します。

建設業許可の土木一式工事は、「総合的な企画、指導、調整のもとに、道路、河川、水路、その他の土木工作物を建設する工事のことを指します」と定義されています。

土木一式工事に該当する工事には、道路工事・トンネル工事・ダム工事などがあり、規模が大きく高い管理能力を求められる工事が多いです。

同様に、土地造成工事においても、「総合的な企画、指導、調整」が必要だということになります。

土地造成工事で圧倒的に多いのが「宅地造成工事」です。この記事では、宅地造成工事を例にとり、土地造成工事の仕事内容を紹介します。

※土地造成工事は、一般的に「造成工事」と略されて表記されることが多いので、本文では、造成工事で統一します。

高杉 有希子
監修者 エクステリアプランナー 高杉 有希子

静岡県御殿場市の土建屋に生まれ、大型重機が大好きな子供時代を送る。
建築に憧れ、三重短大で住環境を学ぶ。新卒でハウスメーカーFC工務店の「インテリアプランナー」に応募するも、社長の勘違いで募集したかったのはなんと「エクステリアプランナー」!!
ハウスメーカーで個人住宅のエクステリアを担当。その後、ゼネコン住宅事業部のインテリアプランナー、植木屋の外構プランナーを経て、現在は(株)ガーデンメーカーで営業設計を務める。

執筆者 お庭の窓口(転職情報)編集部

お庭の窓口転職情報の編集部です。 社内の造園・外構のプロたちから助言をいただきつつ、皆様に有益な情報を提供できるように頑張ります。

目次

宅地造成の大半が盛土造成地である理由とは

小高い場所にある工事現場

わが国で、宅地造成地の大半が盛土造成地である理由は、宅地にできる平坦地が少ないからです。

高度経済成長期を契機に都市部の人口が急激に増加しました。しかし、国土の大半は山地であり、平地の面積は国土の約3割しかありません。宅地として利用できる平坦地が不足したため、郊外の丘陵地や台地、山麓などの改良が必要となったのです。

丘陵地を宅地にする場合、山を削り、削った土を平らな土地に盛土します。これが、盛土造成地の多い理由です。

このとき、忘れてならないのが、自然災害への対策です。地下水や表面水の排水経路、土砂崩れの危険性などを十分考えて施工することが重要になります。

谷や沢を3,000平方メートル以上埋めて造成した土地、20度以上の傾斜地の上に5m以上盛土した土地を大規模盛土造成地といいます。

この大規模盛土造成地では、都道府県が造成宅地防災区域に指定しなければなりません。また、擁壁の設置又は改造その他必要な措置を講じることが法律で定められています。

(宅地造成等規制法 昭和36年法律第191号)

宅地造成工事の一般的な施工の流れを紹介

舗装したての道路

ここでは、宅地造成工事の一般的な施工の流れを紹介します。

宅地造成工事では、様々な専門工事業者の協力が必要であり、土木一式工事に必要な全体工事の高い管理能力が必要であることを理解していただけるはずです。

また、宅地造成地は、そこで暮らす人々の安全の基本であると同時に、生活する上での利便性や快適性も大切になります。

準備工

建設業工事での準備工の主なものは、現場の調査や確認、仮設工などです。

工事を施工する土木会社は、発注者から受領した設計図面や仕様書を基に、現場を測量したり目視したりして調査・確認し直します。

現場と設計図面に違いがある場合は、発注者に報告して対応を協議しなければならないからです。

仮設工とは、必要がなくなったら解体撤去する、工事施工のための施設や設備のことです。足場、仮囲い、仮設トイレ、工事車両の通行による道路の汚損を防ぐ敷き鉄板などのことをいいます。

伐採・伐根工

宅地の多くは、これまで手が付けられていない郊外が多く、自然のままの森林や林地が多く存在しています。その樹木を撤去・処分するのが伐採・伐根工です。

無計画に撤去するのではなく、環境保全に影響がないか、専門的な機関による判断が考慮されていなければなりません。

宅地造成で発生した支障樹木の伐採・伐根物は、産業廃棄物になります。マニュフェスト伝票による適切な処分が義務付けられています。

処分場に搬入して処分する際には、決められた大きさに処理することも必要です。

撤去・移設工

撤去・移設工とは、工事進捗の妨げになるものを撤去したり、現場外に移設したりする工事のことです。

宅地造成を計画する区画に、土地所有者が保有する財産(家屋・庭木など)、歴史的な価値のある遺跡・遺物などがある場合は、これを撤去(補償が必要)したり、移設したりします。

また、宅地造成工事の支障になるような、瓦礫や異物が地盤中に混入している場合も撤去が必要です。

比較的、市街地に近い場所での、水道やガスなどの埋設管の撤去・移設も含まれます。

掘削・盛土・残土処理

宅地造成工事での土工の中心は、掘削・盛土・残土処理です。

土工の基本となる切土・盛土は、切土(きりど)は地面を削り取ってGL(地盤高さ)を低くすることで、逆に土を盛ってGLを高くするのが盛土です。

計画敷地内を掘削した土砂で盛土することが多いのですが、余剰な土砂は、現場外へ搬出することもあります。これが残土処理になります。

宅地造成工事規制区域内での、切土・盛土は、宅地造成等規制法により都道府県知事の許可が必要です。

擁壁工・構造物工

宅地造成工事の擁壁工は、造成後の法面や高低差のある斜面が、降雨や湧水で崩れないようにするために施工されます。構造物工とは、擁壁工に準じたもので、トラフや階段、雨水誘導管などのことです。

擁壁工は、鉄筋コンクリートやコンクリートブロック、石材で、法面や斜面を覆うように土留するのが一般的です。特に、鉄筋コンクリートの擁壁は構造計算が簡単で、道路に対して垂直に施工できるため敷地を効率的に使えるというメリットがあります。

水道施設工

水道施設工は、ライフライン施設設置の基本です。

宅地計画地の水道を管轄する自治体の給水配管本管から、分岐して設ける給水管及びこれに直結する給水施設(給水用具)を設置する工事になります。

宅地造成工事での給水工事は、止水栓・伸縮止水栓・量水器などを設置せず、宅地内に引き込みした給水管末端にキャップ打ちで工事完了となることが多くなっています。

水道施設の規格や仕様は、各自治体で微妙に違うことがあるため注意が必要です。

排水工

宅地造成で欠かせないのが、排水施設の設置です。法面の崩壊や土砂の流出を防ぐ目的で設置されます。

以下のような土地の部分や箇所に設置を求められます。

  • 切土又は盛土をした部分にできる斜面の下端部分(擁壁で覆われた部分を含)
  • 道路となるべき土地の側辺部分
  • 切土面で湧水又は湧水のおそれのある箇所
  • 盛土面の地表水や湧水が集中する部分
  • その他地表水を速やかに排水する必要がある部分

施工は、各自治体で規定した仕様に依らなければなりません。

舗装工

宅地造成工の終盤では、舗装工事が施工されます。居住者の生活の基盤となる車両の通行路となる重要な施工です。

施工の流れは、一般的な舗装工事と変わりませんが、優先されるのは居住者の安全・利便性・景観です。

以下に舗装工事の流れをまとめました。

路床工事舗装の最下層で最も荷重を受け基盤となる大切な部分
路盤工事舗装の中間層の締固め部分で荷重や衝撃を分散する
基層工事アスファルト混合物を兼ねしたものを敷きローラー重機で転圧
表層工事摩耗や水に強く滑りにくい耐久性のあるアスファルトを使用

そして、必要に応じて、標識や照明灯などの道路付属施設工を施工します。

造成工事 まとめ

造成工事

造成工事の仕事内容が分かりやすいように、工事の流れとともに、それぞれの工種の概要を紹介しました。

土木一式工事に該当する造成工事に欠かせないのは、全工事工程の進捗管理と工種間の調整です。また、発注者の意向とともに、居住者の将来にわたる安全性や利便性も忘れてはならいポイントです。

造成工事は、多くの人が生活する宅地全体の基盤となります。難しさはありますが、やりがいも大きい土木工事といえるでしょう。

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